![]() 飯田線・小坂井駅 |
飯田線の船町駅、下地駅に行こうと、豊橋駅で降り、飯田線ホームに向った。だが、次の列車は岡谷行きで、その両駅には停まらない。船町、下地停車の列車もそれ程待つ必要は無かったのだが、豊橋駅で時間を潰すのも何だしと思い、岡谷行きの列車に乗り込んだ。下地駅の次の駅で、豊橋から3つ目の駅の小坂井駅にでもふらり立寄ってみようと思った。 船町駅、下地駅をかすめ、右にカーブして、名鉄名古屋本線と分岐すると間もなく小坂井駅だ。小坂井町の中心駅で、こじんまりとした住宅街の中に、2面3線のホームがある。 |
![]() 小坂井駅駅舎(ホーム側)。 古そうな木造駅舎。 |
かつては、愛知電気鉄道(後に名鉄)の小坂井支線が、ここから1.2km先の名古屋本線の伊奈駅まで伸び、豊川鉄道(後に飯田線)豊川駅まで名鉄の特急などが乗り入れていた。しかし、1954(昭和29)年の名鉄豊川線全通により、小坂井支線は廃止になった。 その当時からのものだろうか。上りホームには古そうな木造駅舎が面している。だが、駅事務室はカーテンが閉ざされ、現在は無人化されている。そして、その木造駅舎の真横では、新駅舎の工事中だ。鉄パイプで組まれた足場や、シートに囲われた中に、完成間近の新駅舎の姿が見える。という事は、この木造駅舎が失われる日も近いのだろう。 |
![]() 駅舎正面。大きな桜の木が印象的。 |
駅前は狭い道が横切り、何軒かの商店が並び、周りは住宅が多い。後で寄った下地駅、船町駅に比べれば、乗降客も多く、町の中心駅だという事を感じさせる。 木造駅舎の真正面には、2本の桜の木が駅に密着するように立ち、天に向って広がらんとばかりに枝を伸ばしている様が目を奪う。春になると、きっと満開の桜が駅を覆い、桜吹雪が駅舎に降り注いだのだろう。その壮烈な様を思い浮かべると、もう一年早く、この駅に気付いていればという後悔が心を過ぎる。新駅舎工事に関連し、間もなく、この木造駅舎と桜の木は失われてしまうかもしれない。 |
![]() 木造駅舎亡き後も桜は咲く。 |
それから数ヵ月後の4月、桜を求め飯田線の下り列車乗った。車窓から小坂井駅を見ると、すっきりとした見通しが良くなった風景の中で、あの2本の桜の木が佇んでいる姿が目に入る。満開の季節を迎え、1月とは違い、薄いピンク色の花をその身いっぱいに華やかに装っている姿に車内から見とれた。 夕方の帰路の途中で小坂井駅に立寄ってみた。新駅舎には目もくれず、真っ先に、満開の花を咲かす桜の木の下に立つ。新駅舎工事で、桜の木も撤去されてしまうのではと気になっていたが、よく残っていたものだ。だけど、駅舎が失われ、桜の木の下にぽっかりと虚ろな空間が広がっている様子はやはり物足りなく寂しい。もしこの桜の木に心があるとしたら、この空間は長年連れ添った木造駅舎を失った空虚な心を映し出しているのだろうか。 |
![]() 小坂井駅新駅舎。 |
列車の待ち時間の間に、旧駅舎跡横に姿を現した新駅舎を見てみる。左右対称方のコンクリート剥き出しの外観で、現代的な感じがするデザインだ。一応、壁面は平らに整えられているが、塗装されていないため未完成のような印象を受ける。たぶん、コスト削減のため、塗装の必要が無いように仕上げたのだろう。向って左側は、窓が無い鍵か掛けられた部屋で、業務用スペースなのだろう。右側が待合室で、内部は壁際をぐるりとなぞるように、長椅子が壁に組み込まれている。扉は無く、駅舎は頑丈な東屋タイプといった感じだが、冬は寒そうだ。 この日は、飯田線のいくつかの駅舎が、似たようなデザインだったのを目にした。飯田線のローカル駅の古い駅舎が立て替えられる際、このタイプのデザインが今後の標準となっていくのかもしれない。 [2002年1・4月訪問](愛知県宝飯郡小坂井町) |
| Station Photographs−駅と駅舎の写真館−(C)solano. |