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湯谷温泉駅(JR東海飯田線・木造駅舎)


湯谷温泉駅、駅舎

飯田線の湯谷温泉駅。かつては旅館でもあった大きな木造駅舎。
 
湯谷温泉駅の壁。

木のこの質感や古びた雰囲気がたまらない。
 
 飯田線には、下地、船町駅のようにユニークな駅があったり、野田城駅のように素朴な木造駅舎がいくつもあったりはするが、100もの駅がひしめき合う割には、名駅舎と呼べるような古い駅舎は、現在では意外と少なかったりする。そんな中、湯谷温泉駅の木造駅舎は、飯田線諸駅の駅舎の中でも、圧倒的な存在感を誇っていると感じる。

 湯谷温泉駅は、1923(大正13)年、長篠(現大海)-三河川合間の鳳来寺鉄道が開業した際に、湯谷駅として設置された駅で、鳳来寺鉄道直営の旅館も併設された。今に残る木造駅舎は、その当時からのものだ。1943(昭和18)年、鳳来寺鉄道が国有化されると、旅館ではなく国鉄の寮として使用されたが、現在は売店と、駅窓口のみと、建物全体のほんの一角しか利用されていない。なお、1991(平成3)年に、観光振興のため、駅名を現在の湯谷温泉駅へと変更した。

 3月のある日、湯谷温泉駅に降り立った。駅舎に掲げられる3つの歓迎の看板が目に入る。大きめな木造駅舎の側面は看板を掲げるのにちょうどいいスペースのようだ。この駅は湯谷温泉の玄関口でもあり、一帯は自然豊かな天竜奥三河国定公園でもある。湯谷温泉は約1300年前、鳳来寺の開祖、利修仙人が発見したと伝えれている。湯量は豊富で、湧出するお湯は“鳳液泉(ほうえきせん)”と呼ばれ、万病に効くと古くから言われている。

 早速、目的の駅舎を見る。元は旅館、寮だっただけに、木造の割にはかなりの大きさでで、他の木造駅舎とは明らかに違った雰囲気を持つ。むしろ、駅はおまけ程度と言った感じで、まさに旅館、アパートなどに近い建築物だ。一枚一枚、確かに木で構成され佇む大きめの木造駅舎は、ずっしり威風堂々とした空気を放つ。閉じられた木の雨戸は、この建物のアクセントで、いかにも旅館、寮の窓のような感じで並んでいる。焼跡のような濃い茶色の塗装や、古びた木の質感は、なんとも言えない渋味があり魅力的だ。壁はトタンで塞がれた部分もあり、裏口のトタンは三角屋根の家屋のような形をしている。以前は別棟か何かがあり、今より更に規模が大きかったのかもしれない。

 今でこそ、駅にホテルがあるのは珍しくないが、この駅舎は駅宿泊施設の先駆けの部類に入るのだろう。老朽化という仕方ない理由があるにせよ、こんな素晴らしい駅が、今は殆どのスペースが“空室”となっているのは少々もったいない気もする。何かに活用できないものだろうか。一人でも気軽に泊まれるような温泉宿泊施設だったら嬉しいなと想像してみる。それと、責めて一度でいいから、中を見てみたいものだ。

 「歓迎 湯谷温泉」というゲートの下を通り、街に出てみる。駅前に1本の細い道が通り、その両脇に宿などの建物が並ぶ。静かと言うより、寂しげで鄙びた雰囲気が漂う。

 道なりに歩き、踏切を渡った所のお土産屋に来ると、坂の上で、いくつもの上りがバタバタとはためいている様子が目に入った。何かあるのかとそちらに行くと、有料道路、鳳来寺パークウェイの料金所があった。だが、シーズンオフというのもあり、開店休業で、通行する車を見かけずゴーストタウンのような雰囲気さえ漂わす。その横の駐車場に小さな御堂のようなものがあった。何かと思い見たら「温泉スタンド」で、壁からは注油ホースらぬ、注湯ホースが伸び出ている。有料だが、100リットル100円と格安で、“鳳液泉”を気軽に自宅で楽しめるのは嬉しい。何にも増して、湯谷温泉一番のお土産で、持って帰りたい所だが、鉄道旅行の身ではそれも不可能だ。

 駅に戻り、駅舎内に入ると奇麗に改装された中に、窓口と売店があった。上の方には、額に入った飯田線の写真がいくつも飾られている。1985(昭和60)年に、一旦は無人化されたが、地元の強い要望で、1994(平成6)年に、委託だが再び有人化された。駅員さんは売店の店員も兼ねている。数々の名産品をよそに、私の目を引いたのがふ菓子だった。先程、駅の裏で、おじさんが何かが一杯に入ったごみ袋大の透明の袋を手に、車から降り駅舎内に入るのを見て、あれは何なのだろうと気になっていた。パンだろうと思っていたがふ菓子だったのだ。袋(小)で300円、大でも500円とお手頃な値段だ。だが、小でもかなりのボリュームで、かさ張りひとり旅の身では、買うのはためわれた。

[2003年3月訪問](愛知県新城市)
木造駅舎裏側。

駅舎北・裏側。空きスペースは駐車場になっている。
日が当たらないためか、壁の色がちょっと違う。

 
駅は湯谷温泉の入口。

駅はその名の通り、湯谷温泉の玄関口。
 
温泉スタンド

温泉スタンド。
 
特急伊那路が湯谷温泉駅に停車。

特急伊那路も停車する。
 
湯谷温泉駅ホーム。

ホームは1面1線のシンプルな構造。
 

Station Photographs−駅と駅舎の写真館− (C)Solano.