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肥前長野駅(JR九州・筑肥線、木造駅舎)


肥前長野駅駅舎内の待合室

 列車から降り、待合室の扉を開けた瞬間驚いた。高齢者用の電動カートは駅利用者が停めているのかもしれないが、ソファーが積まれ、壊れたタバコの自動販売機が放置されるなど、まるで廃品倉庫と化していたのだ。壁際に置かれた2つの長いソファーがあるが、白い布張りの方は、カビや汚れが酷く、革張りの方も汚く、ここに座って列車を待とうという気は全くおこらない。駅利用者のためというより、遺棄同然でそこに置かれいるように思える。いくら利用が少ない無人駅とは言え、こういう状態を黙認するJR九州は何をやってるんだかと思ってしまう。
 
肥前長野駅駅舎前景

窓に取り付けられた柵

肥前長野駅駅舎前景。下見板貼りの木造駅舎だが、かなり古び、板が剥がれている部分もかなり目立つ。窓の造形が特徴的で、窓に柵が取り付けられているのは珍しいだろう。その横には縦長の窓も設置されている。
 
駅前の犬

 駅前には数軒の民家が並び、その先には国道と、川が横切っていた。
駅の目の前にある家では、犬が鎖に繋がれていた。たいてい、そんな所を通ると、吠えられたり、興味を持たれたりするのだが、そんな気配は全く無く、ずいぶんとおとなしい子だ。その犬に少し近付いてみても、全く動じず、何か思案しているかのように、視線も動かさずジッとしている。でも「雨が降ってるなあ…」とか、きっと他愛の無い事でも、頭に思い浮かべているのだろう。駅があって利用者が居る…、この犬にとっては、一々騒ぎ立てる程の事でもなく、もうあたりまえの光景でしかないのだろう。
 
駅舎ホーム側

 ホーム側にまわると、駅舎がひどく痛んでいるのを更に実感する。風化して柱は細々しく、木の板は痛み剥がれ、ガラス窓は割れたままだ。ここまで修繕すべき箇所が多いのに放置されているのは疑問だが、もう取り壊しの運命にあるので、あえて手が加えられないのだろうか…?廃品が放置されているのは待合室と同じで、乳母車、ビアケース、ソファーなどもあり、ここはゴミ捨て場かと思ってしまう。
 「JR全線全駅(2001年版)」によれば、この駅について「駅舎は町の集会所を併設している」と書かれているが、とてもそんな様子は無く、ただ単に朽ちていく廃墟のようにしか見えなかった。これはこれで味はあるのだが、やはりきちんと整備され(かと言って趣をぶち壊す過度な改修が施されるのではなく)、大切に使われてこそ、古き良き木造駅舎の味が出てくるものなのだなと思った。
 
駅構内に残る津田式ポンプ

 駅横に古井戸が残っていた。ただ、コンクリートの板で塞がれ、もう使われていない事は解る。手押しのポンプも残り、錆付いた本体に、「津田式」とメーカー名らしき文字が大きく刻印され、その他にも、シリーズ名か「大臣」「ケーボー式」と、小さく刻印された文字も見え、レトロな姿に大いにそそられる。隣の駅の用地だったと思われる空き地にも、この廃井戸と同じ型のポンプがポツンと残されていた。
 このポンプについて、帰宅後、ウェブ上で調べてみたのだが、「津田式ポンプ」と呼ばれるもので、広島のメーカーが製造していたという事以外、詳しい事は解らなかった。
 
業務用ホーム跡

 島式のホームだが、今では片方しか利用されていない。他にも、かつての業務用ホーム跡があるが、その上には小さな檻が作られている。その前には、家畜の小屋がある。牛か何かは知らないが、そこで飼われている家畜が、放牧ならぬ“放駅”で、気分転換のために時々、ホーム跡の檻に出されているのだろう。


[2005年2月訪問](佐賀県伊万里市)

Station Photographs‐駅と駅舎の写真館‐ (C)solano.