広電廿日市駅 (宮島線)~広電最後のレトロな木造駅舎~



開業の大正以来の駅舎

JR宮島口駅から広電に乗り換え、10分程度で広電廿日市(ひろでんはつかいち)駅に着いた。

広島電鉄・広電廿日市駅、軌道線・鉄道線両対応のホーム

 2面2線のプラットホームだが、それぞれ低い部分と高い部分があるのが目を引く。専用の軌道を持ち「鉄道線」に分類される宮島線は、今でこそ広島市街を走る路面電車の「軌道線」と直通運転をしているが、昔は宮島線専用の高床車、つまりは路面電車タイプではない車両も運行されていた。そのため宮島線の駅には高低両方のホームを備えていた。しかし高床車の運行が1991年(平成3年)で終了したため、改修の際に高いホームが撤去される駅も多い。広電昔ならがのホームが残る駅は貴重だ。

広島電鉄宮島線・広電廿日市駅の木造駅舎

 宮島方面ホームには古めかしい駅舎がある。路面電車が走る線の駅らしからぬ、高床車時代を感じさせる木造駅舎は駅開業の大正13年(1924年)以来の歴史があり、広電に残った唯一のものだ。開業当初は廿日市町という駅名で手着駅だったという。

 改札口から入ると、待合室や出札口などのあり、その奥に駅事務室が続いている縦長の駅舎となっている。かつへは写真右側の雑草が茂る部分にも建物があり売店が入っていたというが、今では取り壊されトタンで塞がれている。

宮島線・広電廿日市駅、木造駅舎らしい側面

 駅舎側面はあまり手が加えられていなく木の質感に溢れ昔ながらの風情を保っている。駅事務室だった部分だろう。

宮島線・広電廿日市駅、駅舎後部のトイレ跡?

 そして背後から駅舎を見てみた。白い壁の部分は、たぶん駅員さんの休憩室・宿直室と言ったスペースだったのだろう。灰色の小さな建物はトイレ跡だろうか?

広島電鉄宮島線・広電廿日市駅、窓口跡と待合室

 6年ほど前に無人駅となり、窓口は塞がれている。ここは駅舎側面と違い、改装の跡が見受けられる。しかしそれも何十年も前の話。全体的に古びていて、天井が低くベンチひとつ置かれていない。不審者情報の掲示まであり、殺風景ささえ感じる空間だ。

宮島線・広電廿日市駅の木造駅舎、窓口跡

 出札口は原型を留めた昔のままの雰囲気がよく残っている。特に人工御影石を使ったカウンター回りの造りが個性的で何ともいえない渋さを漂わす。2005年までは有人駅だったので、このレトロな窓口で切符や現金のやり取りをしていたのだと思うと、その頃にここで切符を買ってみたかったと思う。

広電廿日市駅、窓口横の扉

 窓口横には扉がある。駅務室前に出られかつては駅員専用と思われるが、今ではもう一つの出入り口として機能している。

広島電鉄宮島線・広電廿日市駅、鉄パイプの改札口跡

 鉄パイプの改札口はもうすっかり錆び付いている…

宮島線・広電廿日市、行き先表示など電光表示板

 ホームに掲げられた電光掲示板は「折り返し」「電車がきます」「JA病院前」「広島駅」「広電前」「西広島」「低いホーム」「商工」「宮島」とたくさんの表記がある。電車が接近するとカラフルに光り賑やかだ。20年前に高床車が廃止され、さすがに「高いホーム」という表示はもう無かった。

レトロな木造駅舎・広電廿日市駅、グリーンムーバーが入線

 宮島方面行きのホームは駅舎から遠いほうが低いホームになっていた。現代的なグリーンムーバーが古い駅に異彩を放つかのような斬新な風景に見える。しかし、地元の人々にとってはもう当たり前の風景なのだろう。

広電宮島線・広電廿日市駅、駅舎反対側の出入口

 古いながらも立派な駅舎があるが、構内通路を渡り広島市内行きのホームに来ると、簡素な出入り口があるのみた。

広島県廿日市市、広電廿日市駅前の街並み

 駅前にはこじんまりとした昔ながらの商店街があった。

 山側に数分歩くとJR山陽本線の廿日市駅がある。あまり事前に調べなく歩いていってらたまたまあったと言った感じだったが、青春18きっぷを使っての旅だったので、離れる時はJRの廿日市駅から東に向かう列車に乗った。

[2011年(平成23年) 7月訪問](広島県廿日市市)

追記

 この木造駅舎は2012年秋に使用停止となり、2103年3月頃から本格的な取壊し作業に入ったとの事。

 そして2013年8月に新駅舎が利用開始となった。高床車用プラットホームも無くなり、駅前にバスロータリーが設置されるなど、駅はかなりの変化があったようだ。


~◆レトロ駅舎カテゴリー: 私鉄の失われし駅舎